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0.檻の中
 
 
「怖い話?」
 
 リカルドは、向いのベッドにだらしなく転がる男に問い返した。
 
「そ。知ってる話でも体験談でもいい。まぁ、素人の怪談にそこまで期待しちゃいないから、なんかテキトーにそれっぽいのでいいぜ」
 
 お前はどこの王様だ。リカルドは男の態度に嘆息した。
 
 宿が満室のため、相部屋となったリカルドとこの男。部屋に入ったリカルドに、男が最初にかけた言葉が「怖い話して」だった。
 
「貴方、いつもそうなのですか? 私たちは…初対面、でしょう? 自己紹介も無しに、急に怖い話をしろ等と…」
 
「そんなに名乗りたいのなら、聞いてやらんでもないが」
 
「礼儀でしょう。…私はリカルド。貴方は?」
 
「あーそんな急に無茶振りするなよ。まだ考えてねえから」
 
「誰が捏造しろと」
 
 男は名乗る程の者じゃない等と誤魔化し、結局名乗らぬまま話を続けた。
 
「じゃあリカちゃん。怖い話、よろしく!」
 
「妙な呼び方しないでください。だいたい、なぜ怖い話なんですか?」
 
「そりゃお前、暑いから」
 
「涼みに出たらいかがですか? 怪談より、体の芯から冷やしてくれますよ」
 
「この滝のような豪雨が、か。却下だ。外に出れねぇから、こんな部屋に野郎2人で閉じこもって退屈してんだろ」
 
 男は嘆息して窓から外を見る。窓には水滴が叩きつけられ、先ほどから強風でガタガタと軋んでいた。リカルドも同じ様に窓に目をやる。確かにこれでは嵐が去るまで宿から出ることはできないだろう。
 妙なことになった。とリカルドは嘆息した。
 
「…仕方ありませんね…」
 
 リカルドは諦めて男の向いのベッドへ掛け、記憶の引き出しを開いた。
 
 
 

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