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6.鏡にうつる
 
 
 
「ある町のはずれに、今は人の住んでいない瓦礫の町がありました。その町のどこかに、古い姿見が立てかけてあって、鏡を見てしまうと、『そちら側』に引きずり込まれてしまう…。そんな噂話を聞いたことがあります」
 
「なあ、ちょっと気になったんだが」
 
 何か? と首を傾げるリカルド。男は疑わし気に問いかけた。
 
「リカちゃん、そうやって行く先々で怪現象の情報収集でもやってんのか? 実はそういう趣味の人?」
 
「…個人的な事情で、情報収集はしています。怪談とはまったく関係ありませんけど。結果として、何故か怪現象ばかり提供されるのは…私の人選ミスなのか…流行っているのではないでしょうか?」
 
 それもどうよ。と呆れたように言う男を無視して、リカルドは話を戻した。
 
「その話を聞いた日の夜、私は偶然、その鏡の前を通りかかってしまい…」
 
「…なあ本当に偶然かそれ? いくらなんでも起こりすぎだろ偶然。俺もう、すべての怪奇現象はお前が裏で手ぇひいてんじゃねえかって思えてきたんだが」
 
「失礼な。私も好きで遭遇している訳じゃありません」
 
「じゃあなんでお前、そんな常に『人気の無い町外れ』とか『人の住んでいない町』とかひとりで徘徊してんだよ!? お前の方がよっぽど亡霊くさいぞ」
 
「それも個人的な事情です。…話、続けていいですか?」
 
 男は「なにそれ気になる」等とぼやいていたが、リカルド睨むと渋々口を閉じて先を促した。
 
「廃墟の壁に立てかけられた大きな鏡は、雨風にさらされ錆びて、ひび割れていました。私はその姿見が噂の物と気づかず、つい、鏡を見てしまったんです…」
 
「中から手でも伸びて来た?」
 
 男がおもしろがって言う。リカルドはいいえ、と首を振った。
 
「割れて汚れた鏡の中には、自分の姿と…その足元に、女性の首が映っていました。首は、ニィっと不気味な笑みを浮かべて、鏡越しに私を見ていました。そして、女性の首は笑ったまま言いました。『返して…ねえ、私の体を返してよ』と」
 
 男は急に茶化すのを止め、固まった。
 
「私には心当たりがありました」
 
「…は?」
 
「そういえば一日前、町外れで首のない女性が首を捜していたのを思い出したので、私は足元の女性の首を抱えて、その首のない女性のところへ行こうと…」
 
「まさかのリベンジ!? お嬢さんその負けん気は悪くねぇが、相手が悪いってことに気づいて!」
 
「すると笑っていた女性の首は、何故か急に泣き出して消えてしまって…」
 
「可哀想にな…今度こそ驚かせたかったんだろうよ。この鈍感野郎を。俺ならマジで声も出ないほどビビッてやれたのに」
 
「なんか、消える前に『優しくしないでよ馬鹿』って罵倒されたんですけど…私は何か悪いことをしてしまったのでしょうか?」
 
「…さあね。乙女心は複雑ってことじゃねえの。ところで、リカちゃん」
 
「なんですか?」
 
「俺は怪談しろって言ったはずだが? 誰が天丼所望したよ」
 
 
 

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