僧「凄いですね、あんな風に細長い板を靴に付けるだけで長距離を飛んだり跳ねたり落ちたりと」
術「まあそうだが最後のはなんか違うだろ、なんかこうニュアンスとかそういう方面で」
僧「早とちりしないで下さい、私の言った『落ちる』はすなはち『滑り落ちる』と言う事ですよ?
あなたはその程度も予想出来ないんですねぇ、『Tを聞いて]を知る』と言うことわざを考えた方に全身全霊で謝ったらどうですか?」
術「と言うかそれ何でローマ数字なんだよ、おい」
僧「あなた何言ってるんですか?『ローマ』だなんて物語の中の地名じゃないですか
それをあたかも実在するかのような口振りで言うなんて……この私に成り済まし詐欺は通用しませんからね」
術「………なんだか会話のキャッチボールが出来てない気がするが、まあとりあえず」
僧「どうかしましたか?」
術「あんた、さっきから俺の靴に何してんだ?というか括るな!!…うわ重っ!?」
僧「折角この私がわざわざあなたに即席スキー靴を作って差し上げたのに何か不満ですか?」
術「不満以外に何も無いだろ」
僧「……酷い、私の事は遊びだったんですね!!」
術「……そういったのは公衆の面前で叫んで脅すものだろ…ここ森だし俺ら以外誰もいねぇって、あんた案外馬」
僧「では頑張って下さいねー、一回位スキーでの大ジャンプ、見てみたかったんです」
男に背を押され、もう一人の男は勢い良く滑り出した。
それを見送る男は二人分の荷物を持って、もう一人の男が先に何も無い崖へと滑って行くのを見ていたが、
もう一人の男の姿が完全に見えなくなると、男は柔らかい笑みを浮かべ、一人が消えた方向とは逆の方へと歩み始めた。
「やっぱり、ドーピングでもしなければ素人はプロには勝てませんね。…でもなかなか良い滑りっぷりでしたよ?きっと」