作:ハルトリョウ

おまけ:とりの

「こんな大きな湖が凍るってのは絶景だな・・
 にしても雪にあんまいい思い出もないしこういうところはさっさと通り過ぎるに限る。
 って、言ってる端から人の靴に何してやがる」

「これか?この鋭利な刃物は靴に取り付けると通常確かに歩きにくくはあるが氷の上で大変重宝する移動手段になる不思議なブレードだ。
 ターンもジャンプも思いのままというのだから便利なものだな」


「誰がそんなネガティブオプション装備しろって言ったよ」

奪い取った靴を履きながら、自分の靴につけろよ、いらねえよ、滑らねえよ、というか滑るだけならただの靴でもできるんだよ、と淡々と続ける術士。
術ではなく拳を放ってきそうな雰囲気を感じ取ってか剣士は大げさに溜息をついてわかったとだけ答えた。
あれだけ盛大な溜息なのにどうして口しか動かないのだろうとある種驚きを感じながら剣士の顔を見る術士はそれが不幸して剣士の次の行動を見落とす。

「こういう風に使う」

発言にようやく視線を降ろせば、降ろしすぎた視線、剣士の足先には先程のブレードがついた靴。
本当につけたのかと呆れたところさらに少し持ち上げた視線、剣士の手元には見慣れた袋。
見慣れて当然なのはそれが先ほどまで自分の所有物だった証拠とも言える。

気づいて文句を言うより早く剣士が後ろに一歩踏み出すと、ブレードが氷を滑り剣士の姿はするすると流れるように離れていく。

「ふっ・・・ざけんなっ」

刃がついていない靴で術士は氷の上へ一歩を踏み出した。
二歩目を踏み出す前に世界が反転して後頭部に痛みと冷たさを感じた術士は、とりあえず石拾って投げることにした。

視界の先で華麗にジャンプ。


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