過去・現在・未来

「これは懐かしいな・・よく父もこれで私を叱ったものだ」

「・・・・・・あんたの口から血縁の匂いがする単語を聞く日が来るとは思わなかったな」

「失敬だな、人を木のまたから産まれたような表現で見ないでもらおうか」

「失敬はお互い様だな、木だってあんたみたいなの産みたくないだろうよ。
で、一応家族がいると仮定して」

「何故仮なんだ」

「叱られたということは、割と厳しい家・・?だったのか?」

「家に疑問符がかかることが不思議だが・・そうだな正誤は問わず不義には罰の家だった」

「疑わしきは罰す、ってわけか」

「うちの家訓は疑わしきは滅す、だった」

「・・・色々な疑問を通り越して、感嘆の二文字だな。できればお前の出身地も教えてくれ」

「私が住んでいたのは名もない村でな・・しかし、何を通り越したんだ」

「わかった、そういう名前の村なんだな。
通り過ぎたのは、お前に家族がいることや、どうしてお前をきちんと躾けてくれなかったのかということや、もしくは滅せられていない現状からしてこれが躾けられた状態なのかもしれないということや、そもそも俺達はイカソーメンについて話していたはずだが、ということだ。
しかし現状となってはもうどうでもいいから、とりあえず名もなくて構わないその地域だけでも教えろ」

「聞いてどうする、親の顔が見てみたい、とでも言いたくなったか?」


「いや、人生一生涯その地域には近づかないようにする為だ」



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