酒場に響く武勇伝。

嘘が誇張か壮大に。

酒のみ達は手を叩き、

涙を流して聞き惚れて。

どうせ全ては一夜の夢さと。

今日も素面の酒場の主は、

夢の戦場物語る。


酒の席


最近、大きな国や街の方じゃ、緑が減って困ってるって話だ。

誰がって?妖精や聖霊さ。

追い出された妖精さんは、行き場を無くして困ったさ。

放浪の先、彼らは人の世で最も夢のある場所に落ち着いた。

それはどこかって?

そりゃお前、うちの酒場に決まってんだろ。

人が出会って、時には愛なんか生まれちまって。歌って騒いで祝い酒よ。夢を語って、夢に溺れて、夢の中だ。

この世にこれ以上幸せな場所があるかよ?いや、ねえな。

ほれ、昨日から来てる美人の歌い手がいるだろ?彼女なんて間違いなく妖精だぜ。


あ?じゃあ何で翌朝頭痛がするのかって?

まあ確かに、酒が過ぎりゃ気分が悪くなるし、騒ぎが過ぎりゃ喧嘩もあるわな。

そりゃそうだ。
お前、こんなイイ店妖精さんだけが占拠できる訳ねぇだろ。


悪魔だ。

この店は悪魔もお気に入りなんだ。

だから、今日はちょっとだけ…とか思っていても、ついつい飲みすぎちまう。
楽しいじゃれ合いが、取っ組み合いに一足飛びだ。
苦労話は笑い話で、嘘は美味い酒のつまみよ。

全部悪魔のイタズラってやつだ。


あ?あの美女が妖精なら、悪魔はどこにいるかって?


そりゃお前、さっきから目の前でホラ吹いてるヤツに決まってらあ。

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