力任せの歌

「そんなわけで新しい音階を考えてみた」

「どこから突っ込めばいいんだ?」

「どこからとは・・?」

「・・・やめとく。言い出したらお前という存在全否定の必要が出てきそうだ」

で、何で音階なんて作ろうと思ったのか、何がそんなわけなのか、どんな音階なのか、それを利用して何をするのか、何故自分にそれを話すのか、色々気にはなったが術師は口を開かないことにした。
その行動とあからさまに顰められた眉を先を促す態度と取ったのか剣士は会話、正式には一方的な「話」を続けた。

「とりあえず曲も作って見た」

「・・・で、どんな音階だよ」

「ヌョ」

「話」を「会話」に戻して今度こそ本当に先を促すと、丁度よいタイミングで剣士は「あ」と「お」の間のような口を開いて先程の文字を発声した。


「・・・・・・・・・・・・・は?」

「ヌョ」


この後剣士作曲のどうといったこともない音楽を8つの音階で聞かされ続けた術士は、ようやく開放された一人旅の折に自分が口ずさむ鼻唄にヌョの音が混じっている事に暫く時間を要する事になる。


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ドレミファソヌョラシド

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